どうも、バイブです。
少し前にHeavy Grail: Ghost of Christmas Future Editionを購入して組んだのでいろいろと書いていきたいと思います。
Heavy Grailって?
Heavy Grailについて知るためにはまずHappy Hacking Keyboard(以下HHKB)というPFUから発売されているレジェンド的キーボードについて知る必要があります。
そもそもHHKBは安価なモデルでも27000円程度するかなり高級なキーボードなのですが、その完成度の高さから文字を長時間入力するプログラマーを中心に多くのファンを抱えており、打鍵音・打鍵感をさらに高めるために愛好家によってさまざまな改造が行われてきました。
この改造の極地として存在するのがHeavy Grailであり、元NASA職員などの異色の経歴を持ったデザイナーであるRyan Norbauerさんによって設計されたHHKBのいわゆる改造キットです。ちなみにNorbauerさんはNASA以外にも心理学・政治学の分野で功績を残した上でソフトウェア会社を経営していた過去も持つという本当に恐ろしいくらい優秀な方らしいんですが最終的にはnerd atelier(オタク・アトリエ)を設立して高級キーボードを生み出す道を選んだらしいです。そんなことあるんだ
具体的にはHHKBの基盤(PCB)とラバードーム/スプリングのみを使用し、ケース(ハウジング)とプレートの部分を交換することでHHKBの打鍵感・打鍵音を高めるというものです。なんならラバードームやスプリングについてもDeskeys等のメーカーから交換用のパーツが販売されているのでHHKBの基盤しか使わない、ということも可能みたいです。
Norbauerさん自身はHeavy Grailのことを"The Happy Hacking Keyboard has a new home."というキャッチコピーで表現しています。新しい家、という言葉の通りHHKBの良さを最大限発揮できる構造を素晴らしいデザインで実現しており、この動画を見てみれば普通のHHKBのとの違いがわかると思います。
...というものなんですが見た目・打鍵感の素晴らしさと同時に高価なことでも知られており、一般的なモデルでも680ドル、金属筐体のより高級なモデルでは約1400ドルというとんでもない値段になっています。
もちろん生産されている数はあまり多くないですし、Heavy Grailの商品ページで語られているには大規模に生産されているHHKB以上に精巧なプレートを作るためには数年の開発期間と"stupid expensive"と言われるほどの投資が必要だったらしいのでこのくらい高いのも当然なんですけどね...
そもそもHeavy Grailを組み立てるのにHHKBが必要なのでキーボード1台に軽く10万円以上かかるという凄まじい代物です。それでも静電容量無接点方式を持つキーボードの到達点として存在するのがこれだったのでいつかは入手したいと思っていました。
購入するまでの流れ
実は少し前(2022年)からNorbauerさんによってHeavy Grailを生産終了として今後は他のプロジェクトに取り掛かっていくという告知がなされていました。
そこで生産が終わるにあたってNorbazaarにてクリアランスセールという形で傷がある商品などが割安で販売されていました。(現在はほとんどの商品が売り切れてしまっていますが)
ここで販売されていたのがHeavy Grail: Ghost of Christmas Future Editionです。一般的には650ドルで販売されている品なのですが普通のHeavy Grailには付属している証明書が欠品しているB-Stock品(プレートはピンク)が300ドルという半額以下の破格で販売されていたので円安もガン無視で即購入しました。
普通に買ったら送料諸々込みで10万円くらいかかってしまうということでなかなか手を出せないでいたので5万円以下で購入できたのは本当にラッキーでした。 Norbauerさん ありがとう
購入後
購入したのは2022年の10月末だったのですが卒業論文で忙しくしていたのとHeavy Grailを買ったせいで肝心のHHKBを買うお金がなかったので2023年の2月に組み始めました。
しかし最初に組み始めた時に底面のPCBを固定するプレートがHHKB Pro3用のものではなくPro2用のものを送られてしまっていることが判明し、正しいパーツを送ってもらうことになりました。
ここで交換用のパーツを送ってもらうついでに黒のプレートを購入しました。一緒に送ってもらったので送料無料で買うことができてよかったです。
結局組み始めるのは購入してから3ヶ月半後になってしまいました。はよ組め!
Heavy Grailを組むにあたっての準備
Heavy Grailを組むのに使用したHHKB Classicにはキーマップを変更する機能がないということでKeyboard Quantizer rev.4を購入しました。これを介してキーボードをパソコンに接続すれば市販品のキーボードでもRemapを使用してキーマップを変更できるというものです。
HHKBのjsonファイルを力技で書き換えるという手法も存在するらしいんですがハッピーハッキング文鎮になってしまったら大変なので安全で手軽なこちらを使用しました。自分の場合はスペースバーの右横のキーをFnキーとしているほか、Fn+WASDで矢印キーを入力できるようにしています。
また、Heavy Grailを組むにあたって一緒にキーボードのLubeと静音化を行いたかったのでDes Topre Silencing Ringsを購入しました。HHKB Type-Sで使用されている静音化リングが0.2mmということで同じ厚さ0.2mmのもの(#2 Ultra Thin)を購入しました。
潤滑油に関しては自宅にあったものを使用しました。スライダーとPCBにはTribosys 3204を、スタビライザーにはXHT-BDZを使用しています。
ちなみにキーキャップはHeavy Grail: GoCFの透明な筐体に合うGMKを持っていなったのでHHKBに付属しているものをそのまま使用しました。わざわざDes-Slidersを輸入するのが面倒だったというのもありますが...
→そもそも静電容量無接点方式のキーボードはコトコトとした低い音が特徴なのでABSよりPBTのキーキャップの方が向いているのかな...とも思っています。YouTubeなどで見ていてもあまりDes-Slidersを使っている人は見かけませんし。
組む流れ
Norbauerさんが投稿している動画を参考にすればかなり簡単に組めるので雑に紹介していきます。
HHKBを分解してプレートにTribosys 3204を塗って...
PCBにも全体にTribosys 3204を塗って...
スタビライザーに元々付いていた潤滑油をできるだけ落としてからXHT-BDZを塗り(パーツ同士が触れて音が出る部分をXHT-BDZで埋める、という表現が正しいですが)、Heavy Grailのハウジングを使って再度組み立てて...
完成!
所要時間は5~6時間だったと思います。
組むの自体は簡単(PCBにラバードームとスプリングの位置を合わせるのが少し難しいくらい?)だったのですがスタビライザーの調整で難儀しました。
あとプレートに塗るLubeの量は思っているより少なくていいと思います。「できるだけ薄く/少なく」という表現が一番正しいんじゃないでしょうか。
裏面にPCBを固定する際に使用した穴が残ってしまっていたのでネジの専門店で頭の低いネジを買ってきて塞ぎました。もし同様の部分で気になっている人がいたら3×4の極低頭ネジを購入するのがベストだと思います。
最後に裏面にぬるめたのステッカーを貼り付けました。
別にこのキーボードがぬるめたに関係しているという訳ではないんですがぬるめたを連載しているこかむも先生はキーボード愛好家としても知られており、Heavy Grail: Ghost of Future Editionも所有している(!!!)ということで折角なので貼ってみました。
総額9万円くらいするキーボードにステッカーを貼ると逆にウケてくるのでみなさんもやってみるといいと思います。
感想
最高~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
まず見た目が死ぬほど格好いいです。普通にHHKBのキーキャップを使ってるだけなんですが半端じゃないくらいサマになってます。
透明なケースの中にプレートやPCBが見えているところもゲームボーイ的なカッコよさがあります。丸みを帯びたようなフォルムといい何から何までが洗練されてて...
打鍵感・打鍵音についても本当に素晴らしいです。
普通のHHKBも良いキーボードではあるのですが、ケースがプラスチックで軽い筐体であるためか音に若干の空洞感があり、打っている際にカチャカチャとした騒音が響く点が不満として残っていました。
ハウジングとプレートをHeavy Grailに交換し、Lubeした上で静音化リングを使用したことで打鍵音におけるカチャカチャ感がなくなり、静かでありつつも気持ちいい音を楽しめるようになりました。打鍵音における空洞感もなくなり、もともとのHHKBに存在していた音の不快な部分が全部綺麗に削ぎ落された感じです。
また、HHKBはプレートと本体ケースが一体となった構造をしているのですが、プレートが分離したパーツとなり、ガスケットを挟んで本体ケースにネジ止めるという構造に変わったことで若干柔らかい打鍵感となり、打っている時の音についてもこの影響を受けてか落ち着いた音となっています。この深くコトコトとした音が気持ちよく響く感じは他のキーボードではなかなか味わえないと思います。
本体の重量が増えたことでタイピング中の安定感も増しており、HHKBより気兼ねなくガシガシ打つことができています。自分自身そんなにキーボードを強く打つタイプではないんですがやっぱりキーボードにおいて重さは命だな~~とは思います。
まとめ
全体的にHHKBにおいて存在していた不満点を完全に解決するキーボードになったので本当に満足しています。
半額以下となっても尚なかなか高い買い物だったのですが全く後悔していません。なんなら2022年の1年間で買ったキーボードで一番良かったんじゃないかくらいの勢いです。図らずしも一瞬エンドゲームを意識してしまった
2023年2月19日時点でこちらで最後の在庫が60台程度残っているので気になった方は購入してみるといいと思います。あまり簡単に人に勧められる値段ではありませんがHHKBを愛用している方であれば気に入るキーボードであることは間違いないと思います。
とりあえず普段使いのキーボードとしてはかなり良いものが揃ってきたので今後はBaionlenjaやdnworksあたりを中心にのんびりGBに参加しながらDalcoやOTD、TGRなどの深淵に手を出して行こうかな~と思っています。次キーボードに関する記事を書くのはTGR × Linworks Doliceを組む時でしょうか?
おわり